今回は、LTEのフレーム構造について解説します。
LTEのPhysical Layerを知る上で必須の知識になりますので、何も見なくてもイメージできるよう、しっかり頭に叩き込みましょう。
LTEのフレーム構造は主に2種類
3GPP TS 36.211 (LTE Physical channels and modulation)では、次の2種類のフレーム構造(Frame structure)を規定しています。
- Type 1 (FDD)
- Type 2 (TDD)
Type 1がFDD用、Type 2がTDD用です。
実は、3GPPではType 3も規定されています。
これはWi-Fiのような免許不要の周波数帯を使用してLTE通信を行う、LAA (Licensed-Assisted Access)という通信方式向けのフレーム構造です。
日本国内ではLAAは実運用されていないと思いますので、説明は割愛します。
FDDのフレーム構造 (Type 1)
FDDではType 1のフレーム構造が使用されています。
Type 1のフレーム構造を図で表すと、次のようになります。
上の図から、次のことがわかります。
- 1 Radio Frameは10ms (ms = ミリ秒)
- 1 Subframeは1ms
- 1 Radio Frameには1msのSubframeが10個入っている
- 1 Subframeは0.5msのSlotが2個入っている
このフレーム構造は、DL (Downlink)でもUL (Uplink)でも同じです。
用語
- Downlink: 下り方向(基地局から端末)の通信
- Uplink: 上り方向(端末から基地局)の通信
TDDのフレーム構造 (Type 2)
基本構造はFDDと同じだが少し違う
TDDではType 2のフレーム構造が使用されています。
Type 2のフレーム構造を図で表すと、次のようになります。
上の図から、次のことがわかります。
- 1 Radio Frameは10ms (ms = ミリ秒)
- 1 Subframeは1ms
- 1 Radio Frameには1msのSubframeが10個入っている
- 1 Subframeは0.5msのSlotが2個入っている
つまり、Radio Frame、Subframe、Slotの関係はFDDと同じということですね。
ただ、注意して見ると、TDDのSubframeにはSpecial Subframeというものもあります。
TDDはDownlinkとUplinkで同じ周波数帯を使うため、DownlinkとUplinkを同時に通信できません。
そこで時間を区切って、この時間はDownliknの通信、この時間はUplinkの通信、というように時間を分けて通信します。
時間を区切る単位はSubframeごとになります。
SubframeにはUplink Subframe、Downlink Subframe、Special Subframeがあります。
Special Subframeは、DwPTS (Downlink Pilot Time Slot)、GP (Guard Period)、UpPTS (Uplink Pilot Time Slot)からなります。
TDD Subframeの種類
- Uplink Subframe
- Downlink Subframe
- Special Subframe
- DwPTS (Downlink Pilot Time Slot)
- GP (Guard Period)
- UpPTS (Uplink Pilot Time Slot)
Special Subframeは、通信の方向をDownlinkからUplinkに切り替えるときのみ、間に入れられます。
つまり、UplinkからDownlinkに切り替えるときには使われないということです。
上の例では、1 Radio FrameにSpecial Subframeが2つありますが、設定によっては1つの場合もあります。
Uplink-Downlink ConfigurationでUL/DLの組み合わせを決める
TDDではSubframeごとにDownlink通信とUplink通信を切り替えると言いましたが、その割合は自由に決めることはできません。
割り当て設定も3GPPで規定されており、Uplink-Downlink Configurationと呼びます。
Uplink-Downlink Configurationは、TDDを使用しているeNode B (LTE基地局)から、報知情報の1つであるSIB1 (System Information Block 1)を通じて端末に知らされます。
次の図がUplink-Downlink Configurationになります。
上の図から、次のことがわかります。
- Subframe 0と5は必ずDownlink用 (なぜなら、Subframe 0と5には同期用の信号や報知情報が含まれるため)
- Downlinkの数がもっとも多いのはConfiguration 5 (つまり、ダウンロード速度重視)
- Uplinkの数がもっとも多いのはConfiguration 0 (つまり、アップロード速度重視)
- Downlinkの枠を多く取りつつも、Uplinkをこまめに挟んでいるのはConfiguration 2 (つまり、バランス重視)
どの設定を使うかは、各キャリアがDownlink/Uplinkのどちらを重視するかによって、自由に決められます。
一般に、スマホユーザは動画閲覧のようにダウンロード速度を重視する傾向があるため、Downlink Subframeの数がもっとも多いConfiguration 5を使いたいところです。
しかしConfiguration 5はUplinkが10msに1回しかないため、Downlinkデータ受信に対する応答(ACK)をUplinkで返せる頻度が少なく、かえって通信効率が悪くなることがあります。
そのため、Downlink枠を多く取りつつも適度にUplinkも行え、バランスを重視したConfiguration 2が使われることが多いようです。
Special Subframe ConfigurationでSpecial Subframeの内訳を決める
Special Subframe Configurationも、Uplink-downlink Configurationと同様にSIB1で通知されます。
SIB1のtdd-Configで指定される
Uplink-Downlink ConfigurationとSpecial Subframe Configurationの設定値は、SIB1 (System Information Block Type 1)のtdd-Configで指定されます。
[ASN.1] SIB1
SystemInformationBlockType1 ::= SEQUENCE { cellAccessRelatedInfo SEQUENCE { plmn-IdentityList PLMN-IdentityList, trackingAreaCode TrackingAreaCode, cellIdentity CellIdentity, cellBarred ENUMERATED {barred, notBarred}, intraFreqReselection ENUMERATED {allowed, notAllowed}, csg-Indication BOOLEAN, csg-Identity CSG-Identity OPTIONAL -- Need OR }, cellSelectionInfo SEQUENCE { q-RxLevMin Q-RxLevMin, q-RxLevMinOffset INTEGER (1..8) OPTIONAL -- Need OP }, p-Max P-Max OPTIONAL, -- Need OP freqBandIndicator FreqBandIndicator, schedulingInfoList SchedulingInfoList, tdd-Config TDD-Config OPTIONAL, -- Cond TDD si-WindowLength ENUMERATED { ms1, ms2, ms5, ms10, ms15, ms20, ms40}, systemInfoValueTag INTEGER (0..31), nonCriticalExtension SystemInformationBlockType1-v890-IEs OPTIONAL } TDD-Config ::= SEQUENCE { subframeAssignment ENUMERATED { sa0, sa1, sa2, sa3, sa4, sa5, sa6}, specialSubframePatterns ENUMERATED { ssp0, ssp1, ssp2, ssp3, ssp4,ssp5, ssp6, ssp7, ssp8} }
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まとめ
Radio Frame、Subframe、Slotの関係は、次のようになっています。
Radio Frame、Subframe、Slotの関係
- 1 Slot = 0.5ms
- 2 Slots = 1 Subframe (1ms)
- 10 Subframes = 1 Radio Frame (10ms)
また、TDDのSubframeには次のような種類があります。
TDD Subframeの種類
- Uplink Subframe
- Downlink Subframe
- Special Subframe
- DwPTS (Downlink Pilot Time Slot)
- GP (Guard Period)
- UpPTS (Uplink Pilot Time Slot)
この記事は以下の資料を参考にしました。
さらに詳しく勉強したい方は、ぜひ読んでみてください。
Long Term Evolution IN BULLETS (2nd Edition), by Chris Johnson
3GPP TS 36.211 (LTE Physical channels and modulation)