今回は、LTEのSystem Informationについて解説します。
System Informationは、基地局(eNB)からすべての端末(UE)にブロードキャストされる情報で、そのネットワークに接続するのに必要な情報などが含まれています。
また、緊急地震速報でおなじみのETWS (Earthquake and Tsunami Warning System)に使われるものもあります。
System Informationの種類
System Informationには、Master Information Block (MIB)とSystem Information Block (SIB)があります。
SIBはジャンルごとに分けられ、番号がついています。以下が主なものです。
System Information | 主な内容 |
---|---|
Master Information Block | 帯域幅、PHICH設定、SFN |
System Information Block 1 | PLMN、Tracking Area Code、セル選択パラメータ、Band、規制情報、他のSIBのスケジューリング情報 |
System Information Block 2 | 規制情報、RACHやPDSCHなどの各チャンネルパラメータ、各種タイマー値、UL周波数 |
System Information Block 3 | セル再選択パラメータ |
System Information Block 4 | Intra-Frequency隣接セル情報 |
System Information Block 5 | Inter-Frequency隣接セル情報 |
System Information Block 6 | UMTS (WCDMA)隣接セル情報 |
System Information Block 7 | GERAN (GSM)隣接セル情報 |
System Information Block 8 | CDMA2000隣接セル情報 |
System Information Block 9 | Home eNode Bの名前 |
System Information Block 10 | ETWS (Earthquake and Tsunami Warning System)の通知 |
System Information Block 11 | ETWS (Earthquake and Tsunami Warning System)の通知 |
System Information Block 12 | CMAS (Commercial Mobile Alert Service)の通知 |
System Information Block 13, 15, 20 | MBSFN (MBMS Single Frequency Network)の設定情報 |
System Information Block 14 | 規制情報の拡張 |
System Information Block 16 | GPS |
System Information Block 17 | WLAN |
System Information Block 18, 19, 21 | Sidelink |
System Information Block 24 | NR (5G)隣接セル情報 |
これ以降、主なSystem Informationについて簡単に解説していきます。
Master Information Block (MIB)
Master Information Block (MIB)は、基地局(eNB)からすべての端末(UE)に対してブロードキャストされる、非常に重要なメッセージです。
端末は基地局と通信する前にMIBの情報を取得している必要があります。
MIBの定義を見てみましょう。データ量はそれほど多くありません。
[ASN.1] MIB
MasterInformationBlock ::= SEQUENCE { dl-Bandwidth ENUMERATED { n6, n15, n25, n50, n75, n100}, phich-Config PHICH-Config, systemFrameNumber BIT STRING (SIZE (8)), schedulingInfoSIB1-BR-r13 INTEGER (0..31), systemInfoUnchanged-BR-r15 BOOLEAN, spare BIT STRING (SIZE (4)) }
ここで重要なのは、dl-BandwidthとsystemFrameNumberです。
dl-Bandwidthは帯域幅を意味しており、そのセルがどの帯域幅を使用しているかがわかります。
ただし、帯域幅(MHz)そのものではなく、RB (Resource Block)の数で表されています。
以下がその対応表です。
RB (Resource Block)数 | 帯域幅 |
---|---|
n6 | 1.4 MHz |
n15 | 3 MHz |
n25 | 5 MHz |
n50 | 10 MHz |
n75 | 15 MHz |
n100 | 20 MHz |
systemFrameNumberは現在のSFN (System Frame Number)を表しています。
ただし、本来SFNは10bit (0~1023)からなりますが、上の定義のように、MIBでは10bit中の上位8bitしか通知されません。
残りの2bitの情報をどこから取得するかというと、MIBのsystemFrameNumberが変わるタイミングから推測します。
MIBは10ms (1 Radio Frame)ごとに送信されますが、systemFrameNumberにはSFNの上位8bitしか入っていないため、実質40ms (4 Radio Frames)ごとにしか値が変わりません。
この値が変わったタイミングから下位2bitを推測するというわけです。
次の例を見てみましょう。
MIBのsystemFrameNumber (8bit) | 下位2bit推定値 | SFN (2進数) | SFN (10進数) |
---|---|---|---|
00011000 | 11 | 0001100011 | 99 |
00011001 | 00 | 0001100100 | 100 |
00011001 | 01 | 0001100101 | 101 |
00011001 | 10 | 0001100110 | 102 |
00011001 | 11 | 0001100111 | 103 |
00011010 | 00 | 0001101000 | 104 |
00011010 | 01 | 0001101001 | 105 |
00011010 | 10 | 0001101010 | 106 |
00011010 | 11 | 0001101011 | 107 |
00011011 | 00 | 0001101100 | 108 |
00011011 | 01 | 0001101101 | 109 |
00011011 | 10 | 0001101110 | 110 |
00011011 | 11 | 0001101111 | 111 |
00011100 | 00 | 0001110000 | 112 |
MIBのsystemFrameNumber (SFNの上位8bit)は4回に1回値が変わっています。
SFN = 100からMIBを受信し始めたとすると、systemFrameNumberの値が00011001から00011010に変わったタイミング(赤文字の部分)で、下位2bitが00ということがわかります。
それらをつなげて、2進数で0001101000、つまり10進数で104が現在のSFNと判断できるわけです。
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System Information Block 1 (SIB1)
SIB1は2 Radio Frameごと(つまり20msに1回)に送信されます。「SFN mod 8 = 0」となるSFNで送信され、続く3回は同じものが再送されます。
modは剰余演算子で、割り算の余りを求める演算子です。
「A mod B = C」という計算式は、「AをBで割った余りがC」を意味します。
たとえば「7÷2」の計算結果は「3 余り 1」ですね。これを剰余演算子であらわすと「7 mod 2 = 1」となります。
ですので、「SFN mod 8 = 0」は「SFNを8で割った余りが0」、つまり「SFNが8の倍数」であることを意味します。
次の例を見てみましょう。
SFN | SFN mod x | SIB1送信 |
---|---|---|
63 | ||
64 | SFN mod 8 = 0 | 送信 |
65 | ||
66 | SFN mod 2 = 0 | 再送信 |
67 | ||
68 | SFN mod 2 = 0 | 再送信 |
69 | ||
70 | SFN mod 2 = 0 | 再送信 |
71 | ||
72 | SFN mod 8 = 0 | 送信 |
73 | ||
74 | SFN mod 2 = 0 | 再送信 |
SFN = 64が8の倍数ですので、SIB1が送信されます。続くSFN = 66、68、70では同じ内容のSIB1が再送信されます。
次のSFN = 72はまた8の倍数ですので、新たなSIB1が送信されます。続くSFN = 74、76、78ではまた同じ内容のSIB1が再送信されます。
以上のような流れでSIB1が送信されます。
80msごとに新たなSIB1が送信されることになりますが、実際には内容が頻繁に変わるものではありませんので、実質同じ内容のSIB1が送信されることになります。
次にSIB1の定義を見てみましょう。
[ASN.1] SIB1
SystemInformationBlockType1 ::= SEQUENCE {
cellAccessRelatedInfo SEQUENCE {
plmn-IdentityList PLMN-IdentityList,
trackingAreaCode TrackingAreaCode,
cellIdentity CellIdentity,
cellBarred ENUMERATED {barred, notBarred},
intraFreqReselection ENUMERATED {allowed, notAllowed},
csg-Indication BOOLEAN,
csg-Identity CSG-Identity OPTIONAL -- Need OR
},
cellSelectionInfo SEQUENCE {
q-RxLevMin Q-RxLevMin,
q-RxLevMinOffset INTEGER (1..8) OPTIONAL -- Need OP
},
p-Max P-Max OPTIONAL, -- Need OP
freqBandIndicator FreqBandIndicator,
schedulingInfoList SchedulingInfoList,
tdd-Config TDD-Config OPTIONAL, -- Cond TDD
si-WindowLength ENUMERATED {
ms1, ms2, ms5, ms10, ms15, ms20,
ms40},
systemInfoValueTag INTEGER (0..31),
nonCriticalExtension SystemInformationBlockType1-v890-IEs OPTIONAL
}
SIB1の内容はLTEネットワークにアクセスする上でどれも重要ですが、特にまず重要なのがplmn-IdentityListです。